NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●国内初!学力向上と豊かな感性を育てる アート脳の発想表現アートワークとは●
2013年(嵯峨慈子)

アートと教育という点から海外の事例に詳しく、実践面でも続けていらっしゃる国内でも貴重な小学校の先生と出会いました。昨年の12月のイベントに参加された皆様から「アートの話が面白かった。あーいう先生のいる学校に子供を通わせたい!」というコメントをたくさん頂いています。

アートが「?」の方でも自称芸術系センスゼロの方でも、脳の成長や進化、教育にご興味ある方、子育てママ、パパさんなどに向けて体験レポートをまとめました。4月末には前回イベントと違う内容での講演をお願いしています。アート脳を深め、これからの人生を豊かなものにしていきましょう!

 

教育に使えるアートワークって?

現在まで20年以上教師として
子どもたちに指導している檜森先生

2013年の初夏、「今日はアートセラピーをしている団体の人とあったよ。話を聞いてみたけれど海外の学校で取り入れられているらしく、算数をアートで教えるとか、なかなか面白そうな人だった。脳の話をしていたからブレインジムみたいなものじゃないのかな。興味ある?会ってみますか?」と夫が声をかけてきました。さて、もちろんのこと、脳・海外に事例・アートセラピー!という言葉に「そりゃー面白そうー!会いたい!」と感じた私。その2週間後、表現アートセラピーについてお話を伺う機会を頂きました。

NPO法人表現アートワーク・ジャパンHP
http://www.artworkjapan.com/

 

アートではたくさんの色
形を使って脳を多角的に刺激する

お会いしたNPO法人アートワーク・ジャパンの理事、檜森先生のお話では、カナダの公立学校ではアートを使って算数や理科を学ぶ学校が500校以上もあり、米国でも教育プログラムとして導入され、実績を出しているとのこと。アートを取り入れることによって、アート脳とも呼ばれる従来の一般教育ではなかなか学ぶ事ができない多種類の知能を高めたり、情緒的、社会的能力の向上が見られると言います。

私自身はブレインジムや原始反射など、動きの発達や五感が学力やスポーツ力に関係していること研究し続けていることもあって、これらの特長を重ねもつだろうと想像できる「アート」について俄然興味が湧いてきました。しかし、ひとつ気になることもありました。

私は図工とか絵とかは超苦手なのです(汗!)長く避けていた分野でもあったのでメンタルブロックがかかり(笑)……。

 

作品を作るときに個性や創造性が
開花する指導法が特徴

先生にそのことを聞いてみました。私の質問を聞いた檜森先生は開口一番、「全然、問題ないですよ。大丈夫ですよ~!むしろ、そういう人の方が上手くいくのです。

美大の学生とかだと、常に上手く作ろうとする癖があってワーク自体の効果が減ってしまうことがあるほどです!脳を刺激したり、個性をつくっていくという点では、美的センスも器用さもゼロと思っている人に特におススメですよ!」という言葉が、にっこりスマイルと共に返ってきたのです。

 

親子でアートワークを学ぶ

図工室には色々な作品が飾ってある

8月の夏休み、私は6歳の息子を連れて檜森先生がいる区立小学校へと向かいました。夏休みということで子ども達の姿はなく、静かな学校でした。息子を連れていったのは、小学校低学年の子どもがどのくらい興味を持つか、影響があるか?知ること。

そして私も息子も決して器用ともいえないタイプ。親子でできるものはあるのか?ということも試してみたかったのです。

温かく迎えてくれた檜森先生。教員歴25年以上、担任を持っていた時期もありますが、現在は区立小学校では校内で一人しかおかれないという図工教諭として小学校3年生から6年生の生徒を見るだけでなく、学校になじめない生徒の親子相談をしていたり、都内の発達支援に関わる教員への指導などで出張も多い、とても忙しい先生です。

 

アートと言っても動きも組み合わせる

親子ワークが先生リードのもと始まりました。ウォーミングアップでは「ティッシュを身体で表現する」というワークを。息子は「ティッシュになる」というのを楽しんでいるようでした。

私は「こんなことで、こんなにはまるのー!」と思いながら、自分も「ティッシュ」になったのです(笑)。

 

それから、いかにも“アートっぽい”内容も体験。ママと子どもが30秒ずつ、画用紙にクレヨンでカラフルな線を描きいれながら、2人で何かの形をつくっていくというワーク。

線だけでなく2人で人の顔をつくる、という共同ワークも体験しました。親子ワークでは共に行うことで「待つ」「応援する」「認める」「発見する」などいろいろな力を使う感覚があります。

 

子どもが楽しめるアートワーク

先生の子どもにかける言葉は真似したくなる!
息子の目はキラキラに!

もちろん大人にも良いそうなので私も体験!粘土のような感覚で触覚を刺激するスライムや、どんな風に使ってもダイナミックな作品になる粉絵具でのワークなどを行いました。

どれも難しくなく、色や形、立体や平面を通して視覚や触覚が刺激されます。言葉では言い表せない世界、今まで体験したことがないような新しい感覚が自分の脳につくられている実感がありました。

 

粉絵の具のきれいな仕上げ方など
道具の扱い方に興味を示す

子どものワーク後の変化は素早いものでした。檜森先生との体験が本当に刺激的だったようで「すごく面白かった!また行きたい!」の連発。

先生からもらった紙やスライムを使って自分で実験を考えたり、工作をしてみたり、遊びの中で色や形を使って考えたりと!行動面での変化が見られました。

それが翌日だけでなく、親ならではの気づきですが、1か月後も、2か月後も影響しているのが分かるのです。たった1回の体験なのに驚きます……。例えば工作好きになるとか、足し算割り算など計算する時に、空間的、立体的にとらえるようになっている、などです。

 

計算などは暗記をすればすむし、いずれ暗記に頼る方法を使っていくのだろうけれど、このような理解の仕方を子どもの頃にするのは、今後成長した時にも活用でき、大切な要素だと思っていたので驚きました。

 

図工嫌いから、自分からつくるように
ドンドン変化して驚く

 

自分のことって意外に知らない!アートの力で能力開発

こんな紙をちぎってならべて、水をつける

さて、大人の私はというもの夏休みに行った親子ワークで「自分の可能性が広がっていく感覚」がなんとも言えない感じでわかったので、その後も仕事がお休みの日あれば、檜森先生のところに通いながらアートワークを学ぶことにしたのです。その時の体験レポートを。

 

ただひたすら無心に手を動かす

紙絵具を使ったワークでは無意識的と意識的、両方に触れるようなスタイルで行われます。

ワークをすると色と象徴的な形が現れるのですが、正解を求められない作業なので瞑想的にさえなれます。時に無心に水で色をつけ、時に意識して色を選んで作業していきます。

 

日頃あまり手にしない、組み合わせない
色合わせもアートワークならではの体験

こんな体験もありました。この体験の1か月後にデザイナーさんからIMSIの新ロゴ候補が届いたのですが、そのデザインには私が紙絵具ワークでつくったものと同じ色が使われていたのです。

この色、「ピンクやグリーンって、違うよなー、普段は、あんまり選ばないよなー」という色だったのですが、「うん?これからの私に必要となる色、だったのかな?」と思わせるような体験で驚きました。

今では新しくなったロゴの色も気に入っています。

 

パステルでは粉をティッシュで
散らしながらデザインをつくる

手と山が頭に浮かび、
イメージ力を支える

続いてパステルワークからのひとコマ。
パステルアートでは準備物は画用紙とパステル、そしてティッシュだけです。

最初に好きな色を選びパステルの粉を使う練習を。
次に行い方とデザインの例をみせてもらってトライアル。

3回目には自分がその時イメージするものを自由に作るという順番で行いました。パステルの色が混じり合うと別の色ができていきます。

視覚的にもいい刺激!どういうふうにやっても色が美しくでるのがありがたいです。

「嵯峨さん。ちょっと余談ですが山と手。山は目標、手は掴み取る(手に入れる)という意味があるのですよ」と、檜森先生。当時、私自身は「子どもも小学校にあがったばかりだし、目標はラフにしておいて流れにまかせて行動する方がいいだろうな?」と思っていた頃でした。

それが、このような表現アートセラピーを受けることで、また違った観点からものを見ることになったのです。

 

1枚が4枚になった時の印象が違う

版画の体験。正方形の紙を4つにおり、はさみを使って切り込みを好きに入れます。

好きな形をつくってもいいし、何も考えずに作業をしてもいい。切り取った紙は広げると曼荼羅となり、私たちへとメッセージを与えます。

私の場合、「紙を切った段階ではニヤっと笑った顔」にうつったのですが、広げて、色をのせ、完成した作品をみてみると、人が手をつないでいるようにみえました。

版画に使う色も自分ではブルー、オレンジ、黄緑と原色を選んだのですが、できてみたら柔らかい中間色、ヨモギ色に仕上がっていました。

 

インクの色を選ぶのは直感を使う

パステルも版画も家のリビングルームに飾ってあり、ここで得た発見や気づきを大切にしています。

半年くらいたった今でも、それを見ることで、アタマの中からいろいろなアイデアが湧き出てきたり、思考がガチガチの時には、大切なことを思いださせてくれます。

疲れたときは心に元気をもらったり、癒してくれることも。毎日の生活にちょっとしたアイデアをもらっています。

その他、風景構成画といって川、山、岩、山、田んぼ、道、橋、木、家、人、動物、花などを描き、今、自分のおかれた状況を無意識と意識の両面から触れていくワークなどもあります。風景のパーツのそれぞれに意味があり、それを描くことで今の自分がまだ知らないことを、自然に引き出すという効果があるのです。

 

仕事の理想を形にする時に役立つアートワーク

同僚と同時にアートセラピーをすることで
コミュニケーションを高める

「子どもにいいのかな?」と思ってトライアルしたアートワーク。自分が仕事でこんなにも使うとは思ってもみませんでした。授業のテキストを作る時、コラムを書くとき、人前で話をする前のコンディショニングに。今までは言語で目標を確認していましたが、切羽つまったり、たくさんの仕事がたまると、どうしても「やらされた感」がぬぐいきれないな、ということもありました。

アートワークの時間をとることで、自分の頭の中に既に入っている思考だけではなくて、自分でも意識にあがりにくいことに、毎回しっかり気づかされます。たくさんの色や抽象的なものを通して……。

 

アートワークジャパンの
代表の小野先生と

また、個人セッションでもよく活用しています。スポーツ選手や子どもたち、自分のまだ見ない脳力を開花させたいという方にご参加頂いていますが、その方達の理想を形にしていくときに使います。

アートワークの導入によってクライアントの目指す方向がはっきり見えるまでの時間を加速し、落ちついてポジティブな行動にむすびつくという効果が表れています。

 

アート脳と学力

創造性と作品、手先の使い方について語る檜森先生

アートワークを学ぶことで子どもの成長にとって、どのような影響がでるのでしょうか?

檜森先生のお話によると米国のビジネス調査では大手企業のCEOなど、要職に就く人の脳の状態を調べると、アート的能力が揃って高いのだそう。

創造性やアイデアにあふれ、ものの見方、思考に幅があるだけでなく、それをカタチに変え行動するときに大いに役立っていると言います。

 

不登校や学校になじめない子ども、
保護者と過ごす時間もアートを使う

小学校になると皆、学校に通い、算数や国語など勉強が始まります。国語や英語では字を覚えて書いたり、本を読んで話を理解することを学びますし、算数では形や数の概念を学んでいきます。

そして、それを教える時は反復や決まりごとなど記憶を用いた指導方法が多くなります。これが得意な人はいいいですが、もし、そうでなかった時にはどうしたらよいでしょう?

先生の言葉を理解したり、法則を理解するときには、その言葉の意味や計算の意味を理解しやすくしておくことが大切です。アート脳が開発されてくると、色や形、大きさなどを通して、イメージで素早く理解できるようになります。

 

檜森先生も勉強が苦手な子どもたちにアートを用いて勉強を教えると、理解力が格段に高まると話しています。

アメリカやカナダでは公立小学校でも導入が進んでいたり、一般教育では刺激が足りないと言われているアート的な脳の使い方を教えることによって、個性豊かな子どもたちが育ち、自分らしさをもちながら能力を発揮している姿が報告されています。

小学生など、幼いころから始めると学校の勉強がラクで楽しくなるのでおススメですが、私たち大人が行っても「アート脳」は育つとのこと。期待が持てますね!

 

アートワークとブレインジムのコラボレーション

さて、檜森先生とは「子どもたちの成長」というテーマで関心がピッタリあい、ブレインジムなどの動きの教育とアートワークの統合指導企画などが進行中です。

ブレインジムは身体の動きを使った教育法で、アートは色、形、造形など、ものをつくったり表現したりする教育法。これをミックスすると、それは、それは、奥深いものになるな、ということで実際に学校の授業で取り入れたり、先生たちが活用しやすいプログラムをつくることを初めています。

5月末にはアメリカより第一人者が来日して、教育とアートの関係について事例や手法を紹介するセミナーが予定されています。国内での子どもたちへの事例など、今後の活動はブログやコラムにも書いていきますので、ご興味のある方、どうぞお楽しみにしていてくださいね!私自身も動きもアートも両方深めながら、自分と周りの人の成長に関わる活動を続けていきたいと思います。

 
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