NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●海外からの情報と国内の活動 スポーツと発達支援分野におけるブレインジム●
2013年(嵯峨慈子)

2013年10月26日から11月4日まで米国教育キネシオロジー財団認定国際ファカルティのキャロル・アン・エリックソン氏が来日し国際セミナーが行われました。国内では得られない20年以上の経験のある方の講演。以下海外情報をレポートします。

10月26日公開セミナー 「スポーツにおけるダイナミック・パフォーマンスのためにブレインジムができること」

バスケットボールでの敏捷性を高めるためには

コア、体幹のつながりをみる

内容はパフォーマンスを高めるための準備運動から怪我予防、身体、感情、メンタルへの総合アプローチ法など。オリンピック選手から高校や大学のチームスポーツまで、実践法の事例とともに実際にアスリート(サッカー、スカッシュ、バスケット)をモデルとしたデモストレーションが行われました。

ブレインジムや動きのワークを取り入れることで怪我をする選手が激減すること、戦術で有利な状況を作れるなど、熱心に専門家が耳を傾けていました。また、スポーツ選手特有の思考が脳と身体のコミュニケーションを阻害することもあり、これらに対しての効果的な目標の設定法、男女差によるアプローチの違いなどが紹介されました。

 

10月27日公開セミナー 「ユニークな発達を支えるためにブレインジムができること」

教育関係者が集まり2人組のワークをする

セミナーでは就学時前の幼児から小学校児童、思春期までの子どもたちにおける成長段階に応じたブレインジムの導入法について教育現場から事例が報告されました。就学時前の子どもにどのような動きが必要なのか、指導者や親ができることなど実践的に紹介されました。

続く、小学生への導入法についてのセミナーでは集団教育におけるブレインジムの導入法が報告され、風船を使ったワークや8の字歩きなど、脳を多角的に刺激していくエクササイズと共に、それが勉強にどのようにかかわっているかの関係が示されました。思春期の子どもに対しては「ベストな選択肢を子どもに提供すること」が教師や保護者に必要とされているという話が強調されていました。

 

11月1日ー4日 「動きの探索・レベル1」

ブレインジム、
原始反射だけでなく発達の動きについても深い

気に入った内容!
国際認定コースの指導者を目指す予定!

セミナーでは運動機能、粗大、微細運動、目と手の協調など、動きのパターンから脳の発達をみていきながら、学習障がいに対しての理解や観察の仕方を学びました。ブレインジムに加えて、動きについての総合的な理解やアプローチが含まれている専門的なコースで、ワークの対象は発達支援のこどもたちから一流のスポーツアスリートまで。

今、している身体の動きが、生後1歳2歳までの間に行われる意識的、無意識的な動きと関係していることを学ぶことで、動きの質、行動の質を変化させることができるだけでなく、思考や感情にも影響しているというメソッドは誰にでも使える手法と興味深いものでした。

 

キャロルアンと時間を過ごして

鎌倉行きの電車の中でも
スポーツと原始反射のトークトーク!

キャロルアン先生は米国出身で現在はフロリダ州在住、教師、教育者として45年、加えてスポーツコーチとしての経験と、自閉症や発達障がいのお子さんたちのサポートにブレインジムを導入して25年以上のご経験があります。

スポーツとブレインジムのセミナーでは日々練習に励んでいる中学生から社会人までのアスリートの方と一緒に身体を動かしました。ワークの内容は感情や思考、目の動きや身体の動き、感覚を確かめるものを。また、同時に影響をしている原始反射に対してもブレインジムを使って調整していく方法が示されました。

原始反射は人間の赤ちゃんの発達段階に生じる身体の自然な動きで種類は10種類以上あります。動物の自然な成長としてこの反射は発達、統合という過程をくりかえしながらさまざまは身体の動き、脳の発達をサポートしています。この原始反射へのアプローチは発達障がいをテーマとして活動している欧米の専門家を中心に活用されています。

 オリンピック選手など、世界の一流アスリートでも原始反射がパフォーマンスに影響していることが頻繁にあります。キャロルアン先生はトップアスリートへの指導で、自閉症の子供たちから学んだことが活かされている、という話もされていました。

「えー!スポーツで世界一を目指している人でも発達障がいをもつ人と同じようになっているの?そんなことないでしょ!」と、思う方も多いかもしれません。でも事実として、多くのアスリートに原始反射的動きが観察されます。この理由のひとつに、激しいトレーニングや慢性的になっている怪我の影響、肉体的に加え、通常では考えられないようなプレッシャー、思考や感情など、脳の影響もある、と考えられています。

キャロルアン先生によると、自閉症の子どもたちから学んだことは大きくアスリート向けのワークの大部分がこの体験から生まれている、と話します。

この日のデモンストレーション。スカッシュ選手の動きはステップを踏むときの身体と足の方向転換、移動の敏捷性が高まり、呼吸が変化し、最後まで身体がラクに動いたこと、グリップを握る手の緊張感が軽減していました。

バスケットボール選手は、ディフェンスの際のより素早い動きの能力アップをテーマとして設定。終了後の選手のコメントでは、このような言葉もありました。

 

子どもたちの勉強もスポーツも
動きからのアプローチは多彩

「動きが変化したのが分かる。バスケのプレーでは80%のスピードで動くシーンがあるが、力をいれなくても80%が出せる感覚。頭と身体が追い付かないと負けてしまうスポーツ、脳の影響は大きい。日頃の準備として良いパフォーマンスが続けられること、これは選手として、とても重要」

キャロルアン氏からは、腕の動き、身体の動き、そして靴の中での重心の位置など、ポジティブな変化についてフィードバックがありました。そのほか、サッカー選手は負傷中でまだボールがけれない状態での参加。スポーツ選手で怪我をしている選手の場合、「怪我の前の状態に戻すということを目的にして、ワークをおこなわない」「怪我が回復した後、怪我の前よりも良いパフォーマンスする、という設定してワークをする」

とのこと。野球、ソフトボール、バスケットボール、サッカー、その他のあらゆる種目のコーチやコーチに対する指導を長年してきている先生のお話は、国を超えても心に響くことばかり。私も競泳と、異なるスポーツでしたが、選手生活をする中で体験してきたことを再確認する時間となっています。

スポーツ選手特有の怪我や試合後半での動きのキレの悪さ、ミスした後の身体の動きなどに対して肉体的なトレーニング、メンタルトレーニングなど、それぞれの別に高める能力がありますが、これとは別の次元で生じる「脳(身体、感情、精神)のバランス力の影響」。

「脳と身体がかみあわない」というものですが、これが実際の結果に影響するのは運動をしている人、してきた人なら、また、指導者ならば、身をもって体験している方も多いことでしょう。

これらを運や過去の自分に頼ることなく「今、ここ」に意識をむけながら、実践と結果を自分のものとして所有し、必要とあれば「今、ここ」で調整し、前に進むこと。これはスポーツに要求される要素ですが、そうでない人の多くでも大切なことかもしれません。

 

メモメモメモ!メモは実践に形をかえる

先生の心に響いた言葉やブレインジムに対するメモ書き、ノートは自分の心の中にも残しておきたいと20ページにも。こちらは、スポーツをしている選手、コーチ、トレーナー、そして、スポーツをしている人を家庭で支える人のために形を変えて還元していきたいと思います。スポーツが多くの人の間で楽しまれ、スポーツをする人がパフォーマンスの向上に加え、身体を動かしていた、というその経験が将来にわたって豊かな人生に結びつくこと。

競技スポーツを経験し、動きの重要性をライフワークとしているひとりとして、「脳と動きのつながり」を伝えていきたいなと思いつつ、今後も一層の努力していきます。

 

スポーツ選手や指導者向けのブレインジムセミナーの開催

スポーツをする人がブレインジムを
取り入れるために

キャロアン先生の国際セミナー後の12月21日。国内で初となる「アスリートとスポーツ指導者向けのブレインジム&原始反射実践講座」を開催しました。

尊敬と信頼をもつブレインジムインストラクターの灰谷さんと共同で内容を作り、日本教育キネシオロジー協会理事長の田村ゆうこさんをオブザーバーに迎えて行ったセミナー。

現役アスリートから指導者の方にご参加いただき「ブレインジムや原始反射という考えをどのように競技に役立ていくのか?」実践的に体験する時間をつくりました。知識レベルも体験的にも何を伝えるのか?とても1日で紹介しきれないことはありましたが「練習前のモチベーションアップで使えそう!」「あの体操みたいなのもっと教えてください」など関心を頂いています。

 

怪我の予防から恐怖、技術向上まで
どんなトレーニングにも組合わせできる

一般的ブレインジムから応用編が求められるスポーツの世界。そして、スポーツされている人は即、結果を求めることが多いです(笑)。スポーツ分野向けのプログラムは種目の違いや、チームスポーツなのか?個人スポーツなのか?などでプログラムの幅が変わってきます。

選手やコーチのリクエストに応じた、より実践的なプログラムが必要となるでしょう。

 

スポーツ選手へのブレインジム&原始反射ワークセッションから

中学生は感覚派!脳を開発、競技力を底上げする

現在、担当している選手は中学生から50歳代まで。サッカーなどの集団スポーツからボクシングなどの個人種目の方がいらっしゃいます。それぞれスポーツによって要求される技術や能力が違いますが、共通して常にあるのが「勝ちたい」「大会で結果を出すこと」。そのような目標はもちつつも、日々の積み重ねが大会でのパフォーマンスに影響することを考慮していきます。

1日は24時間あります。寝ている時間も引いても1日16時間くらいはあるでしょう。練習前、練習中、練習後、その他の仕事をしている時間などについて、選手の方とは 「この時間帯にどんな思考で、どんな気持ちで、どんな行動をしていきたいですか?」ということを確認していく時間をとっています。なぜかというと、選手は日々、既にしっかり練習時間をとっているし、トレーニングもしているのです。特に優秀なコーチや監督がついていれば、まず、どうひっくり返っても練習の質や量などは足りないなどということはありません。

ですので、あえて違う部分の開発というと、反復練習だけではなかなか変化しない、集中力やモチベーションの維持、本番力や、苦手意識や恐怖感など「脳」や「脳と身体のつながり」に注目し、その部分をトレーニングしていくのです。もちろん、よっぽどの例外を除き、一瞬で変わる魔法はおきないのですが、これらの「つながり開発」は確実に、「つくる」ことができるのです。

 

スポーツによって足の使い方が違う、
ワークを考える時大切にしたいポイント

「つながり」「動き」という様々な角度から選手と共に「ほしいもの」を確認しつつ「進化するための学び」をサポートしています。世界大会レベルの方もいますが、部活に所属してレギュラーを目指している学生さんもいます。

技術が向上したり、練習に身が入ったり、スポーツに関してだけでなく勉強にもよい影響がでるのが脳トレーニングならではの複合的効果!時にスポーツ選手向けのトレーニングを、「運動が苦手で、勉強も苦手意識」のあるお子様に同じように行っても、進化の階段を上がっていかれる姿をみます。
お母様からはこの部分、結構気に入って頂いています!!

 

スポーツをしているお子様をもつママさんへの応援プログラム「スポーツママ」

子どもとどうかかわっていくか?
ママさんも脳を刺激して頭をやわらかく

昨年秋よりスタートした応援プログラム。ママ自身が集まって話を共有できたり、実践的にブレインジムや動きのワークを体験して頂くことでお子様をサポートしつつ、「ママも脳力開花!」を目標にしている会です。月1回のペースで集中力、本番力、やる気と継続力など毎回テーマを決めています。

今までに「家事が楽にリラックスしてできる」「優しいママになった!」「よく考えてみると怒るまでの閾値がグーンと低くなった」などというお声を頂いています。今後は、ママが家庭でできるセラピーケアなども取り入れ、よりナチュラルな方法でサポートしたい!というママを応援していきます。

 

東京都区立小学校の授業でのブレインジム導入

脳体操の先生ということに
なっています(笑)

アートワークのコラムでも書いていますが、小学校3年生への図工の授業でブレインジムを担当。

3年生を全クラス分対象として、担任の先生や図工教諭の檜森先生と打ち合わせながら内容を構成しています。

現場に必要なものをくみ取りブレインジムの応用編を使いながら、子ども達への影響などを先生方と共にみています。

 

ラクに8の字を描く子どもは
意外にクラスに半分以下

描いたものを先生と一枚一枚見て
次のワークを考える

子ども達は楽しかったり、気持ち良くなければ行動にでる正直者!そのための大人の工夫はかかせません。

ダブルドードルというエクササイズやロープを使ったワークは、子供たちがのびのびと創造性を高め、同時に集中&バランス力を高めるのにいい反応がでています。

今後も先生たちと協力して、長く継続してもらえる環境作りをサポートしていく努力をしてまいります。

 

終わりに

ママさん、セラピストなどが集まり
コース中に体験的に進化が加速する

スポーツ分野での取り組みも、小学校での取り組みもすべてが学びと発見の連続です。私自身はとりわけ器用な子ども時代を過ごしたこともなく、ひとつのスポーツを続けてきた学生時代を送っています。

「器用でなかったから分ること、見えることも多い」
「天才でないから、選手時代に感じていたことがある」

今では、この体験を幸運だと思えるようになりました。

 ひとりひとりの成長は一般化できない「生きた」世界。とても言語だけでアドバイスできる世界ではありません。共に空気を吸い、声をかけあい、身体を動かしながら「脳と身体がつながる面白さ、気持ちよさ」をより多くの人と共有していくことを楽しみにしています。

※スポーツ分野のブレインジムや脳ワークについて
今年度からグループや団体を対象とした「スポーツブレインジム」「ママさん応援プログラム」の出張ワークショップを受付しています。継続的にワークを実践していく選手・団体向けに限定モニターも行っています。選手や指導者の方で「話を聞いてみたい!」、「どんなことをするのか知りたい!」、「うちのチームはこんなことに課題があるけれど、何か取り入れるとよさそうなことある?」など、ご興味や質問のある方はリクエストを添えてお気軽にご相談下さい。

 
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