NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●妊娠・出産と自然療法●
冨野 玲子

2015年秋に出産し、この春に本格的に仕事復帰しました。
妊娠中には、お子様を持つ受講生の皆様から貴重なアドバイスを頂き、
ありがとうございました!

お陰様で、自然療法の素晴らしい効果を体験し「セラピストで良かった~」と思えるマタニティライフを送ることができました。

感謝の想いと共に、体験談をシェアさせて頂きたいと思います。

 

「妊婦は禁忌!」だった自然療法との出逢い

そもそも「アロマセラピーやリフレクソロジーは、妊娠中に禁忌なのでは……?」と思う方もいるかもしれません。
そう、私もそう習ったことがあるのです! 働き過ぎてヨレヨレになっていた会社員時代、リフレクソロジーが日本に上陸し、
すぐに飛びついて学びました。

人生初の自然療法の学びは、素晴らしい体験でしたが、「妊娠中や病気の人には禁忌」という注意書きに、
「ええ~!? 不調や病気の時に力になると思っていたのに!」と、少しガッカリしたものです。

国内で少し勉強しただけでは、何かにつけて禁忌や制限が多い一方で、
ヨーロッパでは「病気の人も、そうでない人も、ホリスティックにケアを行う」という考えの下、自然療法が行われていることが分かりました。

「妊産婦や高齢者、病と共にある人も、薬に頼りすぎず、自然治癒力を引き出そう」という考えです。
「これだ!」と思い、日本を飛び出しました。

 

世界で出逢った「妊婦、病人、困った時に役立つ自然療法」

東洋医学とアロマセラピーのガブリエル・モージェイ先生と

ベトナム医道センターにて、タム先生によるディエンチャンの指導

南アフリカで国家資格のセラピューティック・リフレクソロジー

それからというもの、暇さえあれば海外に行き、誰に対しても行え、本当に効果のあるセラピーを探し続けました。

その結果、海外には、勉強さえすれば禁忌がなく、妊産婦や病気の方への症例もたくさんあるセラピーがあるということが分かりました。

それが、イギリスで学んだ東洋医学をベースとしたアロマセラピーベトナムのディエンチャン顔反射療法、、南アフリカのセラピューティック・リフレクソロジー、でした。

友人、ボランティア先など、これまで多くの妊産婦や病気をお持ちの方にこれらのセラピーを試してみましたが、とても良い結果が出ました。

「困った時、病気の時、本当に役立つものが、真の自然療法だ!」と実感しました。

これらのセラピーを知って頂きたいという気持ちが、現在IMSIを運営する原動力となっているのです。

そんな中、なんと自分が妊婦になり、これまで学んだセラピーを駆使して、自分自身に妊産婦ケアを行うことになりました。

刻一刻と変化する自分の身体をウォッチングしながら行った産前産後の自然療法は、セラピストとして、大変興味深いものでした。

 

妊娠中の食生活

ベトナム医道の元気の秘訣は楽しいごはん!

自然療法の前に、まず、食事についてお話したいと思います。
インターネットで検索してみると、色々な情報が溢れています。例えば、「妊娠中に摂ってはいけないもの」として、
「生卵、生魚、麦茶、ヨモギ茶、牛蒡茶、生のマッシュルーム、残り物・・・・?」などがありました(笑)。

理由が不明なものも多く、こういった情報を鵜呑みにしてしまっては、何を食べれば良いのか分からなくなってしまいます。
情報収集も時には必要ですが、「折角、人生の中で最も感覚の敏感なこの時期、食べ物も、自然療法同様に自分の感覚を大切にしたいな」と思いました。

ディエンチャン顔反射療法の考えでは、妊娠中だろうと、
病気療養中だろうと、食事の考え方は常に同じ。

「毎日食べて良いのはご飯だけ」とベトナム医道センターの先生方がよく言っています。つまり「ご飯を主食に、色々なおかずを日替わりで食べなさい。」ということなのです。「これはダメ」というものは無いけれど、何かを毎日食べ続けたり、飲み続けたりするのはお勧めされません。

例えば、毎朝オレンジジュースや牛乳を飲んだり、ヨーグルトを食べたりする習慣は、その食品自体には害はなくても、毎日続けることはおすすめしないのだそうです。

私の場合は、普段から何でも良く食べるのですが、妊娠中も変わらず、普通に食べていました。 気を付けていたのは、加工食品。できるだけ、添加物の少ないものを選んでいました。

 

妊娠中に行った自然療法のケア

①感染症対策と感情のケア

妊娠が分かったのは真冬の頃。風邪やインフルエンザが流行っていたので、感染症対策は必須です。そのため、いつもお部屋にはディフューザーで精油を焚き、他にも、マスクの端に精油を垂らしたり、自作のアロマスプレーを使ったりもしました。

感染症対策にお勧めの精油ですが、植物自身が、自分を病原菌から守っているために、実は、どの精油にも、感染予防効果はあります。そこで、私は東洋医学の五行の観点から、自分自身の感情のケアに重点を置いて精油を選んでいました。

●「木」の不調和(イライラ、怒り)に・・・ラベンダートゥルー + スィートオレンジ

●「火」の不調和(感情的、落胆)に・・・ネロリ + パルマローザ

●「土」の不調和(考え過ぎ、混乱)に・・・フランキンセンス + レモン

●「金」の不調和(憂鬱、ネガティブ思考)に・・・北海道モミ + サイプレス など

●「水」の不調和(漠然とした不安、自信のなさ)に・・・ゼラニウム + ジュニパー など


妊娠自体は喜ばしいことであっても、心身や環境に大きな変化が起こる訳ですから、必ず感情のケアは必要です。仕事をしている人であれば、ちょっとした仕事中の感情が母子の健康に影響しますので、尚更です。

もちろん、禁忌の精油もあります。カンファ―、ツジョン、ピノカンフォン、プレゴンなど、使用は勧められない化学成分を持つ精油もありますので、十分注意が必要です。化学成分が分からない方は、信頼できるプロのアロマセラピストに相談して、正しく使うことをおすすめします。もちろん、プロであっても、日進月歩のアロマセラピーの世界、常にブラッシュアップが必要です。当然のことですが、精油を飲んだり、高濃度で皮膚に塗布したりするのは、妊娠していなくても危険な事です。

余談ですが、妊娠前から「経皮毒」には大変気を付けていました。シャンプー、ボディソープ、歯磨き粉の類は、普段から殆ど使わず、クレイで代用しています。

②悪阻(つわり)・乗り物酔いへの対処

胃の気を整えるディエンチャンのツボ

つわりの原因は、体内のホルモン環境の急激な変化による自律神経の乱れと言われていますが、正確な理由はよく分かっていません。東洋医学では、「胃の気」の逆流で、冷えていて胃腸が弱いと悪化しやすいようです。私は、幸い、つわりは全然ありませんでした。恐らく、妊娠前から、様々な自然療法で冷えを解消し、胃腸が整っていたのが良かったのかもしれないと自分で思っています。

つわりはなかったものの、妊娠中も頻繁に国内出張に行っていましたので、新幹線など長距離移動では、酔い防止のためにディエンチャンの耳つぼを活用していました。ディエンチャンでは、「同形説」と言い、形が似ているものは関連性があると考えています。耳は、形が胃袋に似ていますので、耳の刺激は、胃の気を整えるのに大いに役立つと言われているのです。つわりが辛い方にもお勧めできるツボです。

 

③痒みのケア

アロエベラジェルと精油

唯一のトラブルは、痒みでした。

元々あったアトピーが、妊娠中に悪化してしまったのです。
夜になると特に悪化するのですが、これは正に東洋医学的に陰が足りない「陰虚」の状態です。

こんな時は、アロエベラジェルに、陰を補う精油であるラベンダートゥルー、ペパーミント、ゼラニウムを5%濃度でブレンドし、痒みのある所に塗っていました。

 

アトピーの強~い味方、
曲線陰陽ローラー(右)と背中用銅ローラー(左)

また、「搔いちゃダメ」と我慢するのではストレスが溜まってしまいます。

搔くときは、のディエンチャンの陰のローラーで思いっきり搔きます。スースーして気持ちが良く、搔き壊れないので、本当に助かりました。

使ったのは、曲線陰陽ローラーと背中用銅ローラーです。

皮膚のトラブルは勿論のこと、首や肩のコリもほぐれて一石二鳥。お風呂上りや寝る前などに使っていました。今でも手放せないアイテムです。

 

④疲れ目のケア

妊婦は目が疲れやすいと言われています。「妊娠したらパソコン、スマホは禁止!」という助産院もあるようですが、仕事していたら、無理です(笑)! 私は、「疲れ目禁止」ではなく、「疲れをその日のうちに取る事」を心がけました。

ディエンチャンの生殖器チャート

何故、妊娠中は目が疲れやすいのでしょうか?

西洋医学では眼と妊娠とは関係ありませんが、ディエンチャン顔反射療法では、
目は生殖器系の反射区ですから、とても関連性が高いのです。

私は、疲れ目を感じたら、ディエンチャンの道具で目の周りの筋肉をほぐしたり、
ツボを押したりしていました。

反射区を考えると、日々の疲れ目のケアが、
妊娠期間中の健康維持につながったと実感しています。

 

⑤むくみ・冷えのケア

妊娠中のセラピューティック・リフレクソロジー

35週でのセラピューティック・リフレクソロジー施術前

施術後

以前から、セラピューティック・リフレクソロジーの授業や研修では、
率先して自分の足を差し出し(笑)、受講生からよく受けていました。

パワフルに気血を流す「飴とムチ」のお陰で、日ごろから足の冷えもなく、それが妊娠期間中にも良い結果をもたらしていたと思っています。

「妊娠中は禁忌」説ですが、個人的には、「こんなに気持ちが良く、
心身を健康に導いてくれるリフレクソロジーを妊娠中に受けないなんて、
勿体ない!」と思っています。

もちろん、妊娠高血圧症候群など、気を付けるべき状態はありますので、
セラピストにも勉強が必要ですが。

「子宮の反射区を避ければ良い」というのも、東洋医学を考えると、
実はナンセンスな話です。というのは、足の第五趾は腎経の内枝、足裏の湧泉は腎経1番のツボ、足の第一趾は脾経と肝経の経絡が通っていて、いずれも子宮を通過する経絡です。

もし「子宮に通じているポイントを触ってはいけない」のであれば、
「足の殆どの部位に触れてはならない」ことになります。

南アフリカでは、資格を持つセラピストから受けるセラピューティック・リフレクソロジーは、禁忌ではありません。

私は、妊娠が分かってからも、変わらず、授業中には施術をモデルとしてよく受けていました。

そして、妊娠後期、いよいよお腹が大きくなってくる頃、なんと、ディプロマコース第1期生有志の皆さんが、定期的に出張セラピーに来てくださったのです。多少のむくみが出てきました(病院では、この程度では「むくみ、無いですね!」と言われます)が、一度のセラピーで効果テキメン!

むくみだけでなく、妊娠後期に良好な心身の状態を保つのに、本当に役立ちました。皆さんからのセラピー、思い出すだけで、涙が出そうになります。ありがとうございました!!!

(写真提供:南アフリカDI認定セラピューティック・リフレクソロジーディプロマコース第1期生有志の皆さん)

 

⑥番外編 ディエンチャンの陰陽気功

チャウ先生に気功術をやって頂きました

ディエンチャンアドバンスコースでは、健康と長寿のための陰陽気功を学びます。

これは、妊婦がやると、母子ともにとても良い影響を与えるそうで、私も妊娠初期から後期にかけてずっと行っていました。

身体の陰陽バランスを整えると共に、心を落ち着かせたり元気にさせたりする効果も感じられました。

 

妊娠期間を通して

このように、好きなだけ食べ、好きなだけセラピーを受け、
人生で最も丹念にセルフケアを行い、自分の身体と心を大切にして、幸せに過ごした妊婦生活。

なんと、臨月にディエンチャンアドバンスコースを迎え、出産1週間前までフルタイムで働き、たくさんの受講生と共に過ごしていました。

 

臨月で迎えたディエンチャンアドバンス

体重は12㎏増、尿たんぱくや尿糖、血圧なども一切問題なし。

マタニティヨガもマタニティビクスもやらなかったけど健康優良妊婦でいられたのも、気遣って下さった周りの皆様、セラピーをして下さった皆様、
常に温かいサポートをして下さったIMSIの受講生の皆様とスタッフの皆さんのお陰です。

本当にありがとうございました!!!

 

出産をハッピーな体験に

持参したセラピーグッズ

入院バッグには、予め自然療法グッズを用意。

何が必要かは、その時になってみないと分からないため、
色々と入れていました。

●精油

気楽さを促す(木):ラベンダー、オレンジ

喜びの感情に(火):ジャスミン、ローズ、パルマローザ

明晰さを与える(土):スペアミント、レモン

変化の波に乗る(金):サイプレス

滋養する(水):シダーウッド


●ディエンチャングッズ

痛み、痒み、あらゆる問題に:キーホルダー

スムーズな気の流れに:彗星棒

緊急時のケアに:横並び棒

入院中のストレスや緊張の緩和に:コロコロ球

 

無事に女児が誕生しました

予め「自然療法グッズを握りしめて分娩に臨みたい」と病院に伝えてしましたが、子宮口5センチの所で赤ちゃんの心拍の異常が見つかり、帝王切開に切り替えることに。

ここは、有難く西洋医学にお任せすることにして、2550gの女児が無事に生まれました。

 

ジェットコースターの日々でも、心穏やかに

産後は、ジェットコースターに乗っているような、思いがけないことの連続でした。

私は人生で経験したことの無い頭痛に襲われ、腰椎麻酔の副作用による脳脊髄液減少症と診断されました(6日後にやっと治まりました。ホッ。)。そして、生まれた赤ちゃんはそのままNICU(新生児集中治療室)に入ることになってしまいました。

そのような状態でも、自然療法は私を大いに助けてくれました。精油の香りは私を癒し、励ましてくれましたし、セルフケアで行ったディエンチャンは、痛みの緩和や気分転換に役立ってくれました。


娘には様々な医学的診断が下され、そのまま小児病棟に入院、そして手術をすることになりました。

私一人で退院し、母乳をせっせと病院に運ぶ毎日が始まりました。そんな毎日の中でも、産後うつどころか、
常に心穏やかでいられることができました。

妊娠中、自然療法を継続し、毎日美味しく食べて良く眠り、身体の健康を保てていたからこそ、精神面を強く、明るく保つことができたのかもしれません。

産後も大切、自然療法でのケア

産後に行ったセルフケアは、基本的には妊娠中と何も変わりありません。


●アロマで感染症対策、感情のケア

●ディエンチャンでクイックケア(目の疲れ、肩こりなど)

●リフレクソロジーで冷え、むくみ対策(産後はセルフケアも可能!) など。

ディエンチャンのコーム

産後は、妊娠中と同様に、母体のケアはとっても大事。

急に色々始めるのではなく、産前にやっていたことをそのまま行うことをお勧めします。もちろん、人の手に頼るのも良いでしょう。

睡眠不足になったり、毛髪が抜けたり、精神面の変化など、色々なことが起こりますが(笑)、基本のケアができていれば、慌ててアレコレやらなくても大丈夫です!

そうそう、ディエンチャン顔反射療法の頭皮用のコームは、抜け毛にも、睡眠の質向上にもとてもよく、片手でチョコチョコッとできるので、産後、大変重宝しています。

お陰で、産後の体調の回復も良く、骨盤矯正など特に何もしませんでしたが、体重も徐々に戻って約半年後に、自然に妊娠前の体重に戻りました。

 

妊娠・出産・看病・子育て……可能性が広がる自然療法

毎日のセラピーでプクプク&ニコニコです

生後1.5ヵ月でようやく退院した娘は、お陰様で現在8か月、プクプク&ニコニコの赤ちゃんになりました!

小さい身体で精一杯 生命力を輝かせている娘の姿に感動する毎日です。セラピーが大好きで、顔にはディエンチャン、足にはリフレクソロジー、お風呂上りには全身オイルトリートメント……、本当に贅沢ものです(笑)。

勿論、迷いや不安も沢山あります。子供の急な発熱、下痢などの体調不良時。発育の問題。
そして、医師からは、「まだ手術が必要な状態。手術時期はご両親で決めて下さい」なんて言われると……、セラピストであっても、やはり子育ては、手探り状態です。

でも、自然療法はとても奥が深く、勉強する目的を明確にしながら世界に目を向けると、
どこまでも可能性が広がっていくように思います。15年前に日本を飛び出すきっかけとなった「妊産婦や高齢者、病と共にある人も、薬に頼りすぎず、自然治癒力を引き出そう」というホリスティックな視点を心に持ちながら、これからも、子育て、そして、人生の中で起こる色々な出来事の中で自然療法を活用していきたいと思っています。

この経験を活かして、同じような境遇の方にお役に立てたら……と思っています。IMSIのクラスで、また色々と体験談をお話させて頂きたいと思います。受講生の皆様、お会いしたら、気軽に声をかけてくださいね。

 
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