NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●大切な人を癒す自然療法●
~障がいを持つ子へのセラピーから学んだ大切な人を癒すヒント~
IMSI学院長 冨野玲子

普段はIMSIにて沢山の方に自然療法をご指導する仕事をしていますが、このコラムでは、私がセラピストを志す原点となった「大切な人を癒す自然療法」について書いてみたいと思います。

 

「自分と家族を癒したい!」から海外へ

私が自然療法を始めたきっかけは、「自分と家族を癒したい!」と純粋に思ったことからでした。会社員の時に働き過ぎて身体を壊してしまい、同じ頃に家族も病気になったのです。最初に行ったリフレクソロジーのスクールでは、素晴らしい学びがありましたが、「これは治療ではありません。病気の人には行ってはいけません」と言われ、ガッカリしてしまいました。少し勉強しただけでは、禁忌や制限が多いと分かったのです。

そんな中、「ヨーロッパでは病気の人も、そうでない人も、ホリスティックにケアを行う」という考えのもと、病院の中で自然療法が行われていることを知りました。「これだ!」と思い、日本を飛び出しました。その結果、海外には、勉強さえすれば、禁忌がなく、病気や障がいをお持ちの方への症例もたくさんあることが分かりました。「私と同じように、病気の家族にセラピーをしてあげたいと思っている人がいるはず!」そんな想いで、海外で学び続け、その自然療法をIMSIでお伝えしているのです。リラクセーションだけでなく、 困った時や、病気の時に役立つ自然療法を伝えていくのが私の使命だと思っているのです。

 

祖母の最後の言葉は「背中!」

これまで、ボランティア先でも、仕事でも、病気や障がいをお持ちの方にセラピーをする機会が多くありましたが、とても喜んで頂いています。もちろん、プライベートでも日々セラピーを使っています。

特に、思い出深いのは、祖母が私のマッサージをとても楽しみにしてくれたこと。残念ながら亡くなってしまいましたが、最後に私に向かって発した言葉が「背中!」。「背中をマッサージして欲しい」という意味です。祖母の小さな背中にアロママッサージをしながら「セラピストになって良かったな。私がセラピストになったのは、お婆ちゃんにマッサージするためだったのかも・・・」と、幸せに思いました。

 

保育器の中からできる! 我が子へのケア

祖母を見送ってから1年後に妊娠し、そして生まれた子はダウン症と診断されました。ダウン症と言っても、合併症もなく軽い方もいますが、我が子は動脈管開存と心房中隔欠損という先天性心疾患、それに聴力、内分泌の異常などもあり、生まれた直後からNICU(新生児集中治療室)に入りました。

これまでの知識と経験を総動員させ、生まれてすぐから自然療法のケアをし始めました。「できることがあるはず! できることを探す!」そんな気持ちで、保育器の中に手を入れて、まずは背中を擦り、足と顔のリフレクソロジーをしました。勿論、反応なんてまったくありません。それでも、自然療法って、不思議な効果があるのです。

その効果とは・・・やればやるほど、こちらが癒されるのです!これには、科学的根拠があります。触れられると、オキシトシンという、幸せホルモンであり、身体を守るホルモンが分泌されます。痛み、精神の問題、高血圧にも良いと言われるこのオキシトシンですが、これが施術している側にも分泌されるのです。

後で聞いたのですが、子供が障がいを持っていると診断されて、鬱になってしまう親御さんも多いのだとか。私たちの場合は「子どもに何かしたい!」と思ってせっせと施術していたことが、自分の精神の安定と身体の健康につながったのかもしれません。

我が子は、生後20日で緊急手術をし、1か月半で退院しましたが、心臓内部に穴が開いている状態なので、「風邪を引いたら危険な状態。保育園なんて、とんでもない!」と言われていました。でも、私は仕事復帰しなくてはなりません。そこで、一家で自然療法を活用しまくりました。

結果的には、生後7か月から、普通の保育園にも入れました。他の子が、インフルエンザやノロウイルスなどに罹ってお休みする中、幸い大きな病気もせず、ゼロ歳児クラスでは、保育園からお呼び出しがあったのは、突発性発疹の1回だけ。医師に仰天される程、元気に過ごしました。

もちろん、私も夫も、仕事をしながら交代で子守をするのですから、倒れる訳にはいきません。疲労回復のためリフレクソロジーやディエンチャンの交換セッションを欠かさず行いましたが、お陰で自分たちも病気知らずでした。

 

我が子へのケアのまとめ

生後すぐにやったこと

  • とにかく触れる
  • 顔のリフレクソロジー
  • 背中を擦る
  • 足のリフレクソロジー

特に、額の中央は「脳の反射区」です。顔を触る時は、ここをトントントンと刺激するようにしていました。それと、ベトナム医道では、背中は顔の反射区。背中を刺激することで、顔を刺激したのと同じ効果が得られ、結果的に脳への良い刺激となるのです。

 

退院後、家庭でやったこと

アロマセラピー

目的: 感染症予防対策のために焚く。
例)ラベンダー+ティートゥリー、ユーカリ+オレンジ など、シンプルなブレンド
⇒ 感染症予防で行っていましたが、自分たちの精神面にも大変良い効果が見られました。

リフレクソロジー

目的: 内臓の強壮、免疫促進、健康の底上げに。
⇒ ダウン症の子は足裏が敏感なので歩くのが遅いと言われていますが、初期からのリフレクソロジーで、我が子は足裏の刺激が大好きになりました。

特に、足の第一趾には、肝経の経絡があります。ここは、脳と筋肉に関連する大切な経絡です。ダウン症の子は知的発達の遅れと筋肉の低緊張が特徴として見られますので、肝のケアは重要とされます。

ディエンチャン

目的: 日々、顔に触れることは脳への刺激に。内臓の強壮。
⇒ 表情豊かに、そして、よく眠るようになりました。

特に、眉間から鼻すじにかけて陰のローラーで擦りさげると、ぐずっていたのが、コロリと寝てしまうことがよくありました。

 

手術前後のケア

医師には、心房中隔欠損は、1歳になったら手術と言われていました。1歳と言えば、ちょうどヨチヨチ歩きを始めたり、おしゃべりが始まる時なのですが、医師よると、手術したらしばらくは寝たきりのため、でき始めたことができなくなってしまうのだそうです。なるべく避けたかった手術ですが、1歳過ぎた頃、肺の状態が悪化していることが分かり、手術に踏み切ることになりました。

そんな時でも、というか、そんな時こそ、自然療法の出番です。自然療法で心臓の穴をふさぐことはできませんが、心身の健康を高めることはできます。手術前も、欠かさず、アロマセラピー、リフレクソロジー、ディエンチャンをやり続けました。英国ロイヤルフリー病院では、手術を受ける患者さん一人ひとりに、セラピストがアロママッサージを施すことで、とても良い結果が出ていると学んでいたことが、大きな励みになりました。

約5時間の手術後、我が子は、呼吸器の管が口から入り、全身チューブだらけ、動かないように背中と両手足をベッドに拘束されている状態で戻ってきました。

そのような状態でも、手術翌日から足と顔のリフレクソロジーを開始しました。すると、ぼーっとしていた顔に、表情が戻って、明らかに喜んでいるのが分かりました。

 

手術2日後にディエンチャンもやってみたところ、「自分でもやりたい!」と意志が出てきて、自分でディエンチャングッズを掴むようになりました。

手術3日後には、ベッドから起き上がって食事をしたり、DVDを見ることができるように、4日後には点滴をしながらも、プレイルームに遊びにいけるようになり、6日後には完全に点滴も外れ、立ち上がって遊ぶようになりました。

結果的には、手術前にできたことができなくなる、ということは何もありませんでした。回復の速さに、医師も驚いていました。

 

我が子が教えてくれた自然療法の素晴らしさ

● 施術する側も癒される(オキシトシンが分泌されます)

● どんな状況でもでき、効果がある。病気でない人には、予防になる。

● 良い副作用がたくさんある
(例えば、感染症予防のために行ったアロマが感情のケアにつながる、健康のために行ったリフレクソロジーが足の強化につながるなど)

 

病気や障がいをお持ちの方に対する自然療法

以上は、子どもについてのお話でしたが、もちろん、大人にとっても自然療法はたくさんの利点があります。ただし、注意点もいくつかあります。どんな場合でも、安全性を最重要に考え、受け手にとって無理のない範囲で行うことが大切です。

 

<主な確認事項>

● 主治医の許可は得ていますか?

● 受け手とのコミュニケーションは取れますか?受け手が嫌だと思ったら意思表示ができることが大事です。

● 受け手の姿勢は、自然で楽ですか?

● 部屋の環境(温度、明るさなど)は、受け手にとって快適ですか?

● 施術内容について、施術者や受け手が不安を持ってはいませんか?もし不安があったら、施術はしないで、ただ手を握ってあげたり、そばにいて話しかけてあげたりするだけでも良いのです。

ターミナル(終末期)ケアの場合は、痛みや苦痛が楽になって頂くことを目的に行うことが多く、気持ち良さが優先されます。そのため、直接手で触れる密着感が大事で、ソフトなアロマセラピートリートメントがとても良いと思います。勿論、精油が使えない環境であれば、キャリアオイルのみ、またはドライハンドで行います。ドライハンドで行う場合でも、オイルを使うのと同じような手で、ゆったりと密着して「触れ合い」を愉しむように行うと良いでしょう。

ボランティアにも活かせる自然療法

セラピーのボランティアを希望される方も多くいらっしゃいます。セラピーボランティアは、とても喜ばれ、価値のある活動です。活動の場としては、病院、介護施設、福祉施設、災害避難所などがあります。

ボランティアを行う際に、忘れてはならないのが、「ボランティアの目的は、施術をしてあげることではない」ということです。ボランティアの目的は、「相手に喜んで頂くこと」です。相手の「して欲しいこと」を汲み取る傾聴スキルが必要です。時には、相手が「施術よりも話したい」ということもあるかもしれません。「セラピーのボランティアに行ったけれども、一緒にお茶を飲んで帰ってきた」ということもあるかもしれませんが、それでも良いのです。

また、無償であっても、有償であっても、他人に施術をする場合は、きちんと勉強をして保険に入っていることが大切です。自分の家族へ施術をする場合は、その方の状態や病気の特徴を知ったうえでの施術ですが、他人に施術をする際には、やはり基礎的な解剖生理学や病理学の知識は必要不可欠です。

大切な人を癒す秘訣とは?

どんな自然療法であっても、人と人とが触れ合うセラピーには「気の交流」が生まれます。「気」は目に見えなくても感じることができますし、人に与えたり受け取ったりすることもあります。

「人を癒してあげなくては!」という強い気持ちは必要ありません。むしろ、自分自身が癒されていて、心身が健康であること、穏やかな気持ちでいることが、大切な人を癒すのに重要な要素です。そのためにも、健康的な生活習慣や自分がセラピーを受けることも必要です。もし気分や体調がすぐれないときは、自分自身のケアを優先させましょう。

おわりに

自然療法はとても奥が深く、少しだけかじれは、禁忌など制限も多いと感じる事も多いですが、勉強する目的を明確にしながら世界を目を向けると、どこまでも可能性が広がっていきます。誰にでもできて、効果があり、本当に困った時に役立つのが自然療法。これからも多くの方に届けていきたいと思っています。

まずは、家族や友人が病気になったときに「私には何もできない!」と思う人を減らしていきたいと思います。セラピー初心者の方のために、私たちのこれまでの海外での学びを総動員して「大切な人のために学ぶ自然療法3Dayシリーズ」というコースをつくりました。かつて「病気の方には禁忌」と言われてガッカリした経験を活かし、海外で学ぶような内容をアレンジして3日に凝縮したコースです。

もちろん、仕事やボランティアで、家族や友人以外の人にセラピーを行いたい方には、是非ディプロマコースでプロフェッショナルレベルまで学んで頂きたいと思います。病気の方にセラピーすることは、確かに経験とスキルが必要ですが、コースでは私たちの経験と海外での症例なども含めてたっぷりとお話させていただき、皆さんが夢を叶えるお手伝いをしていきたいと思います。

セラピストを志してから、約20年となります。その間に、公私ともに色々な経験を経てきました。そして、自分がセラピー初心者だった時に「こんな講座があったらなー」と思っていた講座ができてきたように思います。IMSIで出逢う受講生さんの中には、ご自身やご家族が病気を経験された方も多くいらっしゃいますが、気軽に声をかけていただけたら、私の知っている限りで、アドバイスをお伝えさせていただきたいと思います。もちろん、出産を経ても、これからも機会を見て海外に出かけ、どんどん勉強を重ねて、最新情報を仕入れていくつもりです。

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