NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●英国IFPAカンファレンス●
2007年 (冨野玲子)

2007年10月にIFPAカンファレンスとスクールミーティングに参加するために、イギリスに行ってきました。以前、香りとトリートメントの心地良さに魅せられて、会社員からアロマセラピストに転身する決意をして渡ったイギリス。勉強は大変でしたが、補完療法の専門家として活動するアロマセラピストの姿に憧れを抱きながら、先生や沢山の友人のサポートもあり、なんとか大変な勉強を終え、アロマセラピストとしてスタートする事ができました。今回の訪問では、カンファレンス参加の他、現地でアロマセラピー、リフレクソロジーの施術を受けるなど、懐かしいイギリスでリフレッシュする事ができました。出張のレポートと共に、「IFPAの事を知りたい!」という方のために、IFPAの紹介も一緒にさせて頂きます。

 

IFPAについて

IFPA(The International Federation of Professional Aromatherapisits)は2002年にISPAとRQAという二つのアロマセラピー協会が合併して設立されました。ISPAは英国アロマセラピーの基礎を築いたシャーリー・プライス、レン・プライスが創設した協会で、合併当時は科学者のイアン・スミスが会長でした。RQAはガブリエル・モージェイが創った協会で、東洋医学やキネシオロジーなど、幅広い知識と柔軟な発想を身に付けたセラピスト育成に大変熱心な協会でした。

私自身はガブリエル・モージェイが校長を務めるInstitiution of Traditional Herbal Medicine & Aromatherapyで学び、合併前はRQAの会員でした。この二つの協会が合併し、英国最大のアロマセラピー協会IFPAが設立されたことは、イギリスのアロマセラピー界では非常に画期的なことでした。IFPAの本部は、以前ISPAがあったレスターシャーにあり、ロンドンから鉄道で1時間半くらいです。

IFPA設立当初は、イアン・スミスとガブリエル・モージェイの両氏が共同で会長を努めていましたが、その後は、年次総会の選挙で会長が選出されます。教育、リサーチ、会計、法規など各分野の役員も毎年総会で決められます。協会員達の手によって運営されている協会で、何事も会議で話し合われ、投票によって決定されます。

補完療法として、質の高いアロマセラピーを提供する事が出来る真のプロフェッショナル・アロマセラピストを輩出し続けるために、IFPA認定校の代表によるスクールミーティングが定期的に開催されています。ここでは、50種類の精油とアロマセラピー理論、解剖生理・病理学、ボディートリートメントを含む全240時間(今後250時間に引き上げ予定)のIFPA認定校の基準、CPD(卒業後のブラッシュアップ)の見直しなども行われ、活発な議論が交わされます。IMSIも、日本の皆さんにもアップデートされた情報を提供する為、毎年出来る限り参加しています。

現在IFPA認定校は、イギリス、アイルランドの他に、日本、ニュージーランド、韓国、香港、台湾(現在シンガポールの学校が認定校申請中)にあり、IFPA認定アロマセラピストは世界の様々な地域で活躍中です。英国最大のプロフェッショナル・アロマセラピストの集団であるイFパは、セラピスト達の交流が盛んで、情報も豊富にあります。会員名簿を活用して積極的に地域グループの勉強会を行うなど、常に学び向上する姿勢が見られます。年4回配布されるジャーナルには、アロマセラピストによる臨床報告や最先端の情報が満載で、エビデンス(証拠)に基づいたクリニカル・アロマセラピーの普及にも積極的です。

IFPAの一大イベントは、毎年1~2回行われるカンファレンスです。カンファレンスでは、著名なアロマセラピーによるレクチャーやワークショップの他、精油やセラピー関連のメーカーが出展するトレード・ショウが開催されます。アロマセラピスト歴何十年という大ベテランからのレクチャーは、どれも大変興味深いです。同じ協会に属するセラピスト同士、家族のような一体感があり、周りの参加者達とのお喋りもはずみます。今までに私がカンファレンスで知り合った方も、動物へのアロマセラピーを行っている方、妊産婦を専門にしている方、緩和ケア領域で活動している方など、それぞれの専門分野でプロフェッショナル・アロマセラピストとして活躍している方ばかりでした。

有名な本の著者達もカンファレンスに参加されています。とってもフレンドリーで素敵な方ばかりで、気軽に著書にサインをくれたり、なんと「質問があったらいつでもどうぞ」と言って自宅の電話番号を教えてくれたりします。最近では、レイキなど東洋の療法に興味がある方も多く、日本人を見るなり質問攻めにする人もいますので、私自身も情報収集が欠かせません。このように、プロになってからも、勉強熱心で活動的なアロマセラピスト達と同じ協会に所属することは、大変良い刺激となっています。

日本のIFPA認定校は、2006年まではミキハヤシ・スクール・オブ・ホリスティックスタディとIMSIの2校のみでしたが、2007年からは徐々に仲間が増えつつあります。私も、情熱を持ってアロマセラピーの発展に取り組んでいるIFPAの一員であることを誇りに思いながら、これからも日本の会員達に現地の情報をお伝えする事が出来たらと思っています。

 

第8回IFPAカンファレンス報告

今年のIFPAカンファレンスは、2007年10月6日、イングランド中部の待ちシェフィールドで行われました。会場は1638年に建てられた歴史的な建造物Culter's Hall。

高い天井と赤い絨毯、壁には昔の貴族の肖像画という荘厳な雰囲気の中で行われました。今年は年に2回のカンファレンスでしたので、1日のみの開催となりました。

 

スピーチの内容

スー・ジェンキンズ講演「精油と血圧~ありのままの研究報告~」
(エンディバラNapier大学・代替補完療法講師、Edinburgh Holistic School of Aromatherapy校長)

IFPAのリサーチ部門の役員を務めるスーが、Napier大学におけるプロジェクトの例をあげ、研究データのとり方を説明。150名のボランティアを募って行った精油と血圧の研究では全く予想もしない結果が出たというハプニングも語った。

ガブリエル・モージェイ講演
「アロマティック・アキュプレッシャー ~東洋のツボと精油の相乗効果でアロマセラピーマッサージの効果を高める~」
(Institute of Traditional Herbal Medicine and Aromatherapy校長、初代IFPA会長)

20年間に渡りアロマセラピーとツボ療法を融合した独自のメソッドを実践してきたガブリエル・モージェイが、心身の不調への対処や、エネルギーレベルに働きかける精油とツボの紹介をしながら、アロマティック・アキュプレッシャー実践の映像を披露。

 
スーザン・カーティス講演「アロマセラピーが如何にホリスティックであるか」
(ホメオパス、Neal's Yard Remedies創立者、メディ寸ディレクター)

生化学的反応や臨床データだけでなく、エネルギーに作用する直感的なアプローチも応用する自然療法。アロマセラピストが自信を持ってこの二つを融合し、自分のセラピーのスタイルを築くヒントを与えた。また市販の化粧品に含まれる化学成分の危険性にも触れた。

トレードショウ出展企業

  • Alpha Music
  • Daoyin Tao International
  • Essential Training Solutions
  • Neal's Yard Remedies
  • Oshadhi Ltd.
  • Penny Price Aromatherapy
  • Shirley Price Aromatherapy
  • Today's Therapist
 

精油メーカーのブースでは、カタログと様々なサンプルが配られ、参加者が興味津々で比較検討する姿が見られました。印象的だったのが、ヒーリングミィージックCDコーナーで、CDジャケットの上野『Migraine(偏頭痛)」「Cancer(癌)」「Lupus(狼瘡・皮膚結核)」など「このような疾患の人にお勧め!」と疾患名の札が掲げられており、日本との違いを感じました。

年次総会

今回の講演者でEdinburgh Holistic School of Aromatherapy校長のスー・ジェンキンズが会長に選出されました。これまだIFPAの教育部門やリサーチ部門で尽力してきた人物で、会員達からも厚く信頼されています。その他の役員も選出され、退任する役員には感謝の拍手が送られました。その他、各役員からの活動報告、会計報告などがありました。また、会員から募ったケーススタディー・オブ・ザ・イヤー受賞者の表彰や、奉仕活動やアロマセラピーの発展に尽力した会員への表彰式なども行われました。

全国各地に広がる会員に不公平にならないように、カンファレンスの開催場所はウェールズ、イングランド、スコットランドと毎年場所を変えて行っています。私はイギリス留学中は全く旅行をする暇がなかったので、色々な所に行けて楽しんでいます。2008年のカンファレンスは、10月にウェールズの首都カーディフ(ロンドンより鉄道で2時間)で行われ、2日間の開催になる予定です。今年は1日でしたが、2日間のカンファレンスはだいたい皆同じホテルに泊まるので、夕食会や夜遅くまでダンスパーティなどがあり楽しいですよ!IMSIの卒業生と一緒に参加できたらこれほど嬉しいことはありません。

AoRリフレクソロジストを訪ねる

AoRのウェブサイトで、認定リフレクソロジストを片っ端からチェックし、「Hands Holistic Cranionsacral Therapy and Reflexology Clinic」を開業しているLizのウェブサイト(http://handsholisitc.co.uk/index.html)を見つけました。「脊柱」の模様が入ったデザインにこだわりを感じ、ひと目見て気に入って、日本からメールで予約をしました。

当日、「だいたいこの辺」という目星だけ付けて、住所も控えずに来てしまったのですが、歩いても歩いても、普通の住宅街・・・。日本人の感覚で、「クリニックというくらいだから、看板くらい出ているだろう・・・」と思ってしまったのが失敗でした。イギリスでは、自然療法のサロンも「クリニック」と呼びます。自宅開業のクリニックは、看板どころか表札も出ていません。最終的には、ウロウロ迷っている所をLizに発見(!?)され、辿り着くことが出来ました。

Lizは、週1回スクールでクラニオセイクラルを教え、週2回はヨガスタジオでセラピストとして勤務し、週2回自宅サロンで仕事をしているそうです。セラピールームに一歩足を踏み入れると、東洋の香りがします。部屋には仏像や仏具が飾られていました。クライアントさんに説明するときに使うのだそうですが、Lizが勉強熱心で知識が深いことが伺えました。

メニューはフット・リフレクソロジー、クラニオセイクラル、リフレクとクラニオのミックスの中から選べます。私は、折角なのでミックスをお願いしました。セッション料はコンサルテーション込で1時間40ポンド(約1万円)。相場は日本と同じくらいなのではと思います。

コンサルテーションでは、食事や運動、ストレスレベル、生活習慣など日常生活から過去の病歴や家族の概往歴まで、詳しく聞かれていきます。今出ている症状を抑える事が目的ではなく、症状の根本の原因を追究し、内側から改善していこうとするホリスティックセラピーの基本です。

AoRリフレクソロジストは、施術にパウダーを使う人とクリームを使う人がいますが、Lizはクリーム派だそうで、アーモンドオイルとミツロウをベースに様々な精油がブレンドされている自然素材のクリームを使っていました。沢山の種類の中から私に選んでくらたのは、ベルガモット、ゼラニウム、フランキンセンスがブレンドされた優しい香りのものでした。

英国では、通常、施術前にフットバスに浸かる事はありません。足の皮膚の色や温度なども重要な情報なので、靴下を脱いだばかりの足をじーっと観察され、そのまま行います。また、日本ではショートパンツが用意されている所もありますが、英国では純粋な反射区しか触れないので、だいたい足首の少し上(座骨神経の反射区)までで、着替えも必要ありません。足の反射区のついでに膝裏までマッサージするのは、日本ならではのサービスなのです。

Lizの施術は、軽いストレッチで足の可動域を見ることから始まり、反射区を一つずつ丁寧に刺激していきます。クイクイと、親指を這わせる「ウォーク」の後、スーッと親指を滑らせて鎮静させてから次の場所に移動していきます。一般に、イギリスのリフレクソロジーの圧は、日本の圧力の半分くらいです。

勿論個人差はあると思いますが、圧の好みを聞かれて「強め」と答えると、日本で言う「少し弱め」の圧になると言えるでしょう。物足りなく感じる人もいるかもしれませんが、これは一方的に刺激を与えるのが目的ではなく、皮膚の下にある「ディポジット」の状態を読み取っていく繊細なセラピー。セラピストが渾身の力で押しては、リフレクソロジー本来の目的が果たせなくなってしまいます。ソフトな圧でも、体の弱い部分の反射区に来た時は、ジーンと響くような感覚があります。

時々、Lizの手がピタッと止まって、1分くらい動かない時がありました。圧を入れずに触れられているだけですが、エネルギーが入ってくるようでとても気持ちがよいのです。後から聞いたのですが、これは「バランシング」だそうです。例えば、女性ホルモンのバランスを調整するためには下垂体と卵巣の反射区を人差し指で同時に触れ、静止するバランシングは、フェイシャルリフレクソロジーでも行います。私も、機会があったら是非このフット・リフレクソロジーのバランシング・テクニックを勉強して取り入れてみたいと思いました。

最後に「ソーラープレクサス・ブリージング」と呼ばれる太陽神経叢の反射区を刺激(ぐーっと押すのではなく、くるくると円を描くような動きでした)しながらの深呼吸を行い、そのままクラニオセイクラルに入りました。

クラニオセイクラルとは、日本語に訳すと「頭蓋仙骨療法」です。脳脊髄液が作り出す微細でリズミカルな動きを「生命の呼吸」とし、このリズムを読み取り、自己調整脳力をサポートしていくセラピーです。通常のワークでは、頭蓋から仙骨へと続くラインを行って行くのですが、Lizはリフレクの後、そのまま両足をホールドして行いました。クラニオセイクラルは、見た目の動きは殆どありませんが、内側ではとてもダイナミックな流れの変化が起こると言われています。私は、自分の脳脊髄液の流れは分かりませんが、リフレクソロジーでとても眠くなっていたのが、クラニオが始まると急に気分がすっきりして、あれこれ考えが浮かんで来て、パワーがみなぎっている状態で1時間のセッションを終了しました。

その後、お水を頂きながらアフターコンサルテーション。ディポジットのあった場所の説明や、アフターケアアドバイスなどを丁寧にしてくれました。普段は言われたことのない意外な場所にディポジットがあって少し驚きました。旅の疲れがあったのでしょうか。リフレクソロジストは、本人がまだ気づいていないレベルの身体の状態まで探って、身体の声を代弁して聞かせてくれるのですね。

 

IFPAアロマセラピストを訪ねる

ロンドンより鉄道で約2時間、バースという町があります。駅名の"Bath Spa"からも分かるように、古代ローマ帝国時代に温泉療法の町として発展した所です。ここに、私が最も信頼するアロマセラピストの一人Peyが住んでいます。Peyはマレーシア系の英国人で、私の留学時代のクラスメイト。コースに入学した当初から既にプロ級のアロマセラピーの知識を持っていて、授業が分からない時は、良くPeyに泣きついて教えてもらったのです。

彼女は今、週に2回サロンに勤め、週2回は自宅の1室でトリートメントを行っています。見晴らしの良い丘の上に建つPeyの家には、ティートゥーリーやカレンデュラのオイルで手作りした軟膏など、自然療法のグッズが溢れています。二人のお子さんもアロマセラピーの愛用者。生まれたばかりの時からベビーマッサージを受けて、すくすくと成長しています。何ともうらやましいファミリーです。

懐かしの再会を喜び合った後、Peyのトリートメントを受けました。ガブリエル・モージェイのクラスで共に学んだ東洋医学的アプローチで、五臓六腑の状態を詳しく見て行きます。特に舌診は重要で、「舌の先が赤くなっていたら心(東洋医学の心は、心臓と脳も含まれます)に熱がこもっている」とか、「舌の脇にギザギザの歯形が出来ていたら胃の機能が低下している」など、身体の色々な情報を読み取ります。そして「肝の気の停滞を解消するための精油」「脾の気を強壮するための精油」というホリスティックな観点で精油を選択していきます。この精油の選び方は心のバランスを取るのも大変効果的です。東洋医学では、臓器と精油は深く関わっており、例えば肝の気が停滞するとイライラがつのり、脾の気が低下するとクヨクヨと悩みやすくなります。

60種類以上ある精油の中からPeyが私に選んでくれたのは、カルダモン(脾気の強壮)、ゼラニウムウ(気血の循環、冷却、脾気の強壮)、サイプレス(血の浄化と調整)、グレープフルーツ(肝気のうっ滞の除去、血の浄化)でした。

PeyはIMSIで扱っているのと同じ「マテリア・アロマティカ」の精油を使用しています。野生種又はオーガニック栽培の契約農家で採られた植物を使用して作られたこの精油は、イギリスでも多くのプロのセラピストが愛用していて、妊産婦のケアなどにも使われています。

トリートメントは、スウェーディッシュ・マッサージにクライアントの状態に合わせて経路やディープティッシューを加えたスタイル。時差ボケがなかなか消えない私のために、ヘッドマッサージも取り入れてくれました。IFPAのセラピストは、決まりきった一連の手技だけを行うのではなく、クライアントの状態に合わせてアレンジするのが通常です。ですから、幅広い引き出しが必要で、卒業後もアドバンスコースで技を磨く人が殆どです。甘く爽やかな芳香に包まれながら、心地良いリズムと刺激で、あっという間に眠りに落ちてしまいました。

終了後は、私の症状に合わせて、ヤロウの芳香蒸留水のスプレー、お手製のフェイスクリーム、トリートメントの残りのアロマオイルをプレゼントしてくれました。日本では、法律上の理由であまり行われていませんが、イギリスでは、クライアントの体調に合わせてセラピストがホームケアグッズを作ってあげるのが一般的です。だから、セラピストの家には精油だけでなく、芳香蒸留水やクリーム、ジェルの基材、容器などが大量にあるのが通常です。

私もロンドンにいた頃は、シャンプーやシャワージェルなど、何から何まで自分でブレンドして作っていて、部屋はまるで研究室のようでした。昔のレシピを引っ張り出して、また自分で作ってみようという気になりました。Peyの優しさがたっぷりこもったアロマセラピートリートメントで疲れも吹き飛びました。

私も日本でセラピストとして働いていますが、イギリスでセラピーを受けることで、勉強中だった懐かしい時代を思い出し、「リフレクソロジーでこんなに元気になる」「アロマセラピーでこんなに優しい気持ちになる」と、初めて体験した時のような感動を味わうことができました。ピュアな気持ちでセラピーの良さを再確認して、セラピストとしての原点に立ち返り、また新たな気分でクライアントさんと向き合うことが出来そうです。

いつも温かく送り出してくれ、不在中の留守を守ってくれるIMSIのスタッフにも感謝します。

 
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