NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●ロネと回る世界各国フェイシャルリフレクソロジー紀行●
2009年(江口麻衣)

事の始まり

フェイシャルリフレクソロジーの創始者ロネ・ソレンセンはデンマークの出身ですが、スペインのバルセロナに拠点を置き、世界22カ国でコースを開講しているセラピスト界では大変著名な人です。 ロネとは5年前から一緒にお仕事をするようになり、以来大変多くの学びを与えていただいています。

これまで何度もロネの拠点であるバルセロナを出張などで訪れる機会があり、別れ際にはいつも「もう少しこの土地に滞在して学びを深めたいな・・・バルセロナ大好き!」なんてことを言っていた私。 そんな私にロネがあるとき「ここに居たいだけ滞在しなさい、マイ。実際私は世界中を旅して活動をしているから、よかったらその旅にも一緒にきたらいいじゃない。日本のインストラクターとして、一緒に仕事をすることが可能なのだから。」と本気で誘ってくださったのでした。

こんな縁はなかなかあるものではありません。 気持ちはその場で決まっていました。時間の許す限り、是非一緒に世界のコースをまわりたい。そしてもっとロネのセラピーへの理解を深め、人生経験として世界中のたくさんの人から学びを請いたい。もちろん、お誘いに対する答えは「YES」。そしてこのロネとの8週間にわたる旅が始まったのでした。

旅程

2009年4月30日日本出国→アメリカノースカロライナ州 グリーンズボロ
【フェイシャルリフレクソロジーコース】【ニューロフットリフレクソロジーコース】

→オランダ・アムステルダム
【フェイシャルリフレクソロジーコース】

→デンマーク・スヴェンボー
【テラピア・テンプラーナコース】

→デンマーク・コペンハーゲン
【フェイシャルリフレクソロジーコース】【オーキュラーセラピーコース】【フェイシャルクレンジングクラス】

→スペイン・バルセロナ
【ドッグ&キャットフェイシャルリフレクソロジーコース】【インストラクターズコース】
【コスモフェイシャルコース】

→2009年6月10日 日本帰国

いちセラピストとしての役割

旅程は全てロネの予定にあわせています。 私の役割としては、各国で開催されるフェイシャルリフレクソロジーコースではアシスタント講師として教えることでロネのサポートをすること。またセラピストとしても各国で施術をする機会に恵まれました。

そして今回初の試みとなった日本人ならではのクレンジングテクニックのクラスなどを任せていただきました。それから毎日激務に負われるロネを間近でみて、彼女自身にセラピーをさせていただく、というのも私に課された役割だったように思います。

アメリカ ノースカロライナ州 グリーンズボロ

今回、アメリカ初のIR認定フェイシャルリフレクソロジーコースに参加したのは、約30名のアメリカ人。グリーンズボロという聞きなれない土地ですが、受講生は全米から集まっていました。 日本からやってきた私に皆さん興味を示してくれて、とても気さくに話しかけてくれました。日本人だからこそ持っている技術と文化がある、それを気づかせてくれた場所でもあり、アメリカの人々に日本のよさをまた再確認させてもらった気がします。

私にとってはアメリカ人にかこまれて、ロネが英語でクラスを行っているのに参加するのは、とても新鮮なことでした。

ロネは私のことも、日本でのインストラクターです、と紹介してくれたので、会場にいた30人あまりのアメリカ人に色々質問攻めに合いました。更に、「日本人からジャパニーズコスモリフトのトリートメントを受けたい!」と多くの人から依頼を受けました。 この滞在期間中、朝の7時から予約が入り、授業時間中もセラピーを頼まれ、クラス終了後も夜11まで予約が埋まるという盛況ぶりでした。 英語でセラピーを説明するのは難しいです・・・。でも、体験してくれることでそのよさを言葉がなくても伝えられます。

セラピー直後に、気分がすっきりして身体が楽になったと大喜びで抱きつかれたり、翌朝おきたらいつもの頭痛とホットフラッシュがなくなっていて、本当に感激したと満面の笑みで喜ばれたり、いろんなお顔に触れて、いろんなフィードバックをもらえてとても勉強になりました。アメリカの皆様、ありがとうございました。

アメリカンな生徒たち

ここ海外のコースに来て「いいな」と感じるのは、やはり日本では出会えない人たちに出会えること。

アメリカ全土から参加している今回の生徒さん達は、全員フットリフレクソロジスト。その他ボディーワークもやるとか、アロマセラピー・ホメオパシー・エステティシャンなどなど・・・色々なフィールドの人に出会えます。あるギリシャ人を祖先にもつリフレクソロジストは、おばあさんが薬草で薬を作っていた話をしてくれました。 それぞれ学んできた環境や施術をしている環境も全然違うのです。文化ルーツも違うアメリカだからこそ、色々な人がいて面白いですね。

日本でも他のセラピーの専門家に出会うのはたくさんの収穫があるものですが、ここアメリカでは皆がフレンドリーで、特に日本人というだけでものすごく興味を示してくれます。 日本人だからこそ持っている素晴らしい技術と文化がある、とアメリカの受講生には言われました。その通りだな、と気づかせてもらいました。

たとえば私がマスクをして、施術をしている姿。皆不思議そうに見に来ます。エチケットとしてマスクを着用するというのは、日本人独特のマナーなのですよ! それから、顔を触る前にさっとメイクを落とすクレンジングテクニック。これもまた、セラピストであってもその技術は身近にないわ!と喜ばれました。

セラピスト同士だからできる情報交換がたくさんあります。日本人だから当たり前にしていた素晴らしいホスピタリティ精神を伝えられます。セラピストで日本人で本当によかったな、と本気で思いました。

クラスも皆が自由に質問し、しゃべるので、進行するロネは大変だろうと思ってしまいます。今日は15分で終わるはずのデモが1時間かかりました。

「どうやって圧をいれる?もう一回やって!」
「私だったらこうするわ」
「それって・・・だよね!?」

わからないことは皆でシェアして、考える。わかっていたら自分から率先して教えてあげる。そんな空気が当たり前なので、初めてあったとは思えないほど色々な情報交換が可能になります。友達つくりもこの人たちとなら簡単!と思ってしまいます。

質問内容は、どこの国もかわらないな、と思いましたが、ざっくばらんに話しているので、ロネもプライベートなお話までたくさん話していました。

 

アメリカのライセンス

アメリカでは州ごとにルールが違うので、様々な土地でコースを開講しようと思ったら、とても大変な手続きが必要なようです。 アメリカ全土でも5~6団体あるリフレクソロジー協会と、州ごとのライセンスについて知らないといけません。 ロネ曰く「フェイシャルリフレクソロジー、そしてテラピア・テンプラーナ(脳障害を持つ人とその家族のための早期療法)はアメリカこそ必要としている国なのよ。」 アメリカには、州ごとに多様な法律があって、セラピストという立場もものすごく制限されている事実を知りました。

行ってみてはじめてわかったこともたくさんありました。
自宅開業はできない。
子供に触れることは禁じられている。

特定のライセンス所有者でなければ、人に触れることも厳しく制限される、というわけです。家族が家族のためにセラピーを行うことを中心にするテラピア・テンプラーナはこの状況を考えても適切なわけですね。

こちらがアメリカのフェイシャルリフレクソロジーコース第一期生の皆さんです。

このコースレポートはノースカロライナ州のリフレクソロジー協会NCRA(North Carolina Refrexology Association)の会報誌に後に掲載され、更に私の日本での自閉症児への症例をとりあげてもらっています。ロネは、アメリカ大陸でまた新たな風を巻き起こしました。その現場の感動の中に入られたことに、本当に嬉しく思います。

オランダ アムナスフォート

オランダのIR認定フェイシャルリフレクソロジークラスのみなさんと

ここオランダ、Amersfoortでおこなわれているフェイシャルリフレクソロジーのクラスは、日本で行われているコースほど大きくはありません。 町の規模ももちろん東京とは比べものになりませんが、オーガナイザーのハンネケンも一人でオランダのコースを切り盛りしているので、今回集まった生徒も13名程度です。

クラスルームの外の道でハンネケンと

緑がきれいで、空気もきれい。そして可愛い建物が並ぶ町並みの一角に、クラスが行われる一室がありました。ディズニーシーの世界に来たようで、とても美しい町並みに感動しました。 オランダで出会った受講生の皆さんは、お茶目で気さくですが、とても落ち着いた人々で、まじめな印象を受けました。

クラスでもたくさんメモをとって、時間にもきちんとしています。休憩時間が終わるころには、もうクラス再開の時間よね?と生徒さんから言われます。スペインやアメリカの時の感じとやっぱり全然違います・・・。 もうすでにプロとしてセラピストとしてのキャリアをお持ちの方々ばかりで、オランダのリフレクソロジスト事情も色々伺うことができました。

オランダではVNTと呼ばれるオーガナイゼーションが存在し、そこに登録しているセラピストがクライアントに施術をした場合、クライアントの申請で保険がおりる仕組みがあるそうです。 VNTに属するためには、規定の教育を受け、毎年継続のためにクラスを受けなければいけない規則などもあります。その一環として、今回のこのフェイシャルリフレクソロジーコースに参加している人も何名かいました。 VNTのほかにはVBAGという団体も存在し、リフレクソロジストの地位も少しずつ上がってきているのだそうです。

世界のリフレクソロジスト事情もそれぞれですが、クラスを見ているとロネのセラピストとしての想いは一貫しており、どの国でも同じように考えを伝えていきます。そして、そこに居たみんながやはり色々な感銘を受けているのを、実際目でみて感じることができました。

 

デンマーク コペンハーゲンにて講師活動 スヴェンボーにてテラピア・テンプラーナコース

1週間のデンマーク滞在では、テラピア・テンプラーナ(早期セラピー)のコース、そして新コースオーキュラーセラピーという目の症状に対応したロネのアディショナルコースに参加しました。 また私はフェイシャルクレンジングのクラスを担当しました。海外で教えるというお仕事は初体験でしたが、とても心優しい生徒さんが集まってくださったこと、私の行う日本的フェイシャルクレンジングのテクニックが、彼らにとっては本当に真新しい技術であったこと、それらがクラスを成功に終わらせてくれたかな、と思います。 大変貴重な経験でした。自分が作ったテキストがデンマーク語に訳され、何が書いてあるのかさっぱり分かりません。とても新鮮でした。技術は言葉だけでなく、デモを行いながら伝えられるものなので、語学が十分とは言えない私でも、このようなクラスを任せていただくことができたのだと思います。

受講生はお隣の国、スウェーデンから来ている方もいらっしゃって、ロネの人気の高さをうかがい知ることができました。北欧では英語が普通に通じます。 更に、首都コペンハーゲンではクライアントの予約もすでに入っておりました。日本人の施術ということで、興味を持ってくださる方も多いのですね。

デンマークに到着したその日は、ロネの友人でもあり、デンマークのddz(Den Danske Zoneterapeut Skole)という大きな学校を運営し、ZDC(Zone Conection Denmark)という協会の会長でもあるサンドラの家に泊めていただくことになっていました。 サンドラは笑顔が素敵なリフレクソロジストで、つい先日は初めての来日を果たしました。 3年前に私が一人でデンマークを視察に来た際もお世話になりました。 サンドラの家は典型的なデンマークの一軒家。 お庭にはお花が咲き乱れる開放感あふれるお家です。

左:リネ 中央:サンドラ 右:ロネ  本当に楽しいこのメンバー。

大笑いしながらワインを飲んで、遅くまで語りました。 ロネの故郷。そしてリフレクソロジーの浸透した国デンマーク。

ロネの生まれ育った土地を見て、どのようにフェイシャルリフレクソロジーを作り上げてきたのかの話を改めて聞き、デンマークの気の置けない友人との時間を楽しみ、デンマーク語で話す姿に、ロネの新しい一面を見た気がしました。

テラピアテンプラーナコース

首都コペンハーゲンから車で2時間程度、美しい田園風景と青の綺麗な海を越えながら、スヴェンボーという小さな町にお邪魔しました。ロネの生徒さん宅で、インターナショナルなテラピアテンプラーナのコースが開講されます。脳に障害を持った子供とその家族に対するセラピーを学ぶ壮大な内容のコースです。

学ぶ内容はものすごく専門的で、脳の障害について、なぜそういった問題がおきるのかについて、詳しく掘り下げてロネは丁寧に説明をします。 そして、フェイシャルリフレクソロジーにどのような可能性があるのかについて、明確に実際の症例を交えながら講義は進みます。

これはロネだからこそできるコースです。非常に特別な思い入れがあることも、ロネの言葉の節々に感じることができました。

学習障害など、通常の生活や学習に問題がある場合のその「原因」。 事故などのアクシデントで起こった障害ではなく、機能がうまく働いていないことで起こっている障害は、「感情」と深く関係しています。

子供は生まれてくる瞬間に作られるのではなく、胎児として母体の中にいるときからその形成は始まっており、先天的に何らかの機能がうまくいかない場合、胎児の時になんらかの影響を受けていると考えられます。母の感情や体調と深く関わって形成されているというのです。

また、大変な出産を経た場合も、その時点でゆがみやエネルギーがうまく届かないことで脳障害などになることもあります。 自然はカンペキです。 どこかの機能がうまくいかないのには、何か原因があったからで、何もおこらなければ自然界においてはカンペキにバランスのとれた人間ができるはずなのです。 カンペキなバランスというのは実際にはありえないのでしょうけれど、その不調和が大きければ問題です。 脳障害や遺伝子の異常というのは悪いケースですが、感情の障害など、軽度の症状もあります。 うまくいかなかったところを見つけたら、症状だけにとらわれず、原因となった場所に戻って修理をしなければいけません。

その方法を学ぶのが、このテラピア・テンプラーナのコースなのです。 胎児においても、妊娠期間中、母がどの時点で強い感情を持ったかによって胎児の形成に影響を与えるのです。 母は身体的に食を与えているだけでなく、感情も胎児に与えていることを忘れてはいけない、とロネは強く言っていました。

目からうろこの話が続きますが、全てとても理論的で理解しやすいので驚きです。人として人を産み育てていく女性として、この話を聞けたことが大きな財産になったように思います。

スペイン バルセロナ

ロネの作業の手伝いはなかなか素人には難しいのですが、私は少しでもできることをお手伝いしたいと思い、何かできないか聞いてみました。 そしていくつかの仕事をもらいました。

  1. まずひとつは、私の日本での自閉症児へのセラピー症例を英訳すること。
    自分のブログでも症例としてご報告している途中ですが、この子供へのセラピーの結果を世界にも知ってもらうために、どうしてもすぐ英語版がほしいとのことです。 今、ロネの元には新たにアメリカから様々なオファーが来ています。 5月はじめに一緒に行ったノースカロライナでのはじめてのフェイシャルリフレクソロジーコースが非常に好評だったことで、たくさんの問い合わせと取材の依頼がきているのです。 アメリカのオーガナイザー達は、アメリカ全土でロネのセラピーの宣伝活動を広めるべく、たくさんの英語の症例を集めています。 記事を各所へ送るために英訳された症例がすぐに必要とのこと。 アメリカのオーガナイザーはパワフルです。 オバマ大統領にもロネの活動報告送るわ!と本気で言っていました。 確実にアメリカでロネへの注目度が上がってきているのを日々感じます。 フェイシャルリフレクソロジーはいよいよアメリカで本格始動です。
  2. それからDVDの撮影です。
    私の手を使ってフェイシャルリフレクソロジーと、コスモリフト(ヨーロッパではジャパニーズコスモリフトと呼ばれています)、フェイシャルクレンジングテクニックを映像に収めます。
  3. もうひとつはロネの家族とそのまわりの皆にセラピーをすること。
    ロネとその周りの人の健康。ロネが元気でいてくれるためにも大切です。

インストラクターズコース in バルセロナ

ロネと共にバルセロナで過ごした2週間のうちに、インストラクターズコースというものに参加しました。 これは、世界各国の新しくフェイシャルリフレクソロジーインストラクターに任命された人たちだけが受講できるコースです。 バルセロナにて、初の開講となりました。 内容は、

  • フェイシャルリフレクソロジー・コスモフェイシャルの教え方。
  • 備品の準備から段取りなど、コースの進め方。
  • コースやセラピーのプロモーションの仕方や、よくある質問についての受け答えの方法など。

どのようにクラスを進行すべきかを学び、ロネとの協力体制で講義をしていくわけですから、その打ち合わせも兼ね、教えることを学ぶコースです。 すでにインストラクターの私は、ロネのアシスタントとして、コースをお手伝いをすることに。
私はこのコースで、ポーランド・チェコ・イギリスの新たなインストラクター仲間に、主にコスモフェイシャルのコースの技術面や進行について、アドバイスなどさせていただきました。

 

新インストラクターズ 2009

プロ仕様のカメラも入って、ロネのトークを撮影し、世界中のインストラクターのために内容を配信していきます。インストラクターになるためには、更なる勉強が必要なのです。

ロネの元には今もどんどん新インストラクターとなるべく人がやってくるわけですから、このようなコースが必要になったということですね。よい刺激をいただいて、講師としての活動もまた頑張ろう!と思いました。

終わりに

ロネに出会えたこと、このセラピーを知ることができたことは、私の人生において大きな意味を持つものになりました。とても幸運なことだと思っています。この経験とロネから新たに学んだ価値ある技術と知識を少しでも多くの人にお伝えできたらこれほど嬉しいことはありません。

そして、日本で学び培った経験が、これほど国外で重宝されるものであったということを、この旅の中で知ることができました。ここ日本に誇れる技術がたくさんあるのだ、ということを認識できたことでまた世界が広がりました。手を使うセラピーを通してのコミュニケーションに言葉は要らないし、国境を越えても手で触れることで心を通わせることは可能です。

これからもセラピストとして、また講師としてこの貴重な経験を活かして活動を進めていきたいと思っております。

 
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