NATURAL THERAPIES OVERSEAS

●ベトナムより~ディエンチャンを学ぶ旅●
2009年(冨野玲子)

フェイシャルリフレクソロジー受講がディエンチャンとの出逢い

2003年に、スペインでフェイシャルリフレクソロジーを学んで帰ってきた飯野先生から、「ロネがフェイシャルリフレクソロジーの中で『ディエンチャン』というベトナムの反射療法を応用している」と聞き、大変驚きました。私は大学でベトナム語を専攻し、1年間ホーチミン市に留学した経験があるのです。

「ディエンチャン・・・?」頭の中のベトナム語辞書をめくってみましたが、そのような単語は見当たりませんでした。最初は、ベトナム語で「Dien(=電気) Cham(=鍼)??」と、電気鍼のようなものを勝手にイメージしていました。
*注釈)実際には、「Dien」は「面」、「Chan」は「診」という意味で、「顔診断」から始まった民間療法です。

その後、私も2006年に晴れてIMSI第3期生としてフェイシャルリフレクソロジーを学びました。テキストの中で目にしたディエンチャンのチャートは、「顔中に564個もある神経ポイント」「ペンフィールドの地図にそっくりの大脳皮質に対応した反射区」「鼻を背骨に見立てたフィィジカルボディの反射区」など、斬新で刺激的で、一度見たら絶対に忘れられないようなチャートばかり!「足の反射地図には見慣れているけれども、こんな反射区が顔にあったの!?」と目が釘付けになってしまいました。そして、世界中のセラピーを知り尽くしたロネをも魅了する、不思議なベトナムの反射療法・ディエンチャンについて、もっと知りたい!と思うようになりました。

 

ディエンチャンの第一人者・ドクター・チャウについて

ディエンチャンの第一人者、Dr.ブイ クォック チャウ

インターネットなどで調べても、ディエンチャンに関する情報は殆ど得られませんでしたが、2008年ベトナム旅行中に色々とリサーチしたところ、なんとロネからその名を聞いていたディエンチャンの第一人者、Dr.ブイ クォック チャウのセミナーに関する記事を発見したのです!

私たちIMSIのメンバーは、世界各国の自然療法を現地で直接学び、日本に紹介することを使命としています。これまでも、何度となく世界のセラピーの第一人者に体当たりして、その結果、現在あるIMSIの講座ラインナップの一つ一つを築き上げていくことができたのです。

IMSIの一員として、このまま帰るわけにはいきません。そのセミナーは既に終了していたのですが、厚かましくもセミナー会場に電話をかけ、ドクター・チャウの連絡先を教えてもらいました。そして、遂にドクター・チャウとアポイントを取ることに成功したのです!後から知ったのですが、世界各国、ベトナム全土を飛び回っているドクター・チャウにホーチミン市でお会いできるのは、大変幸運だったようです。

不安と期待を胸に、教わった住所を訪ねた私の前に現れたのは、満面の笑みを浮かべた、お肌ツヤツヤの元気なベトナム人。後で70歳近いと聞いて、その若々しさにとても驚きました。私がベトナム語を話すことと、フェイシャルリフレクソロジストとして活動していることに好感を持っていただいたようで、私とドクター・チャウは初対面でも意気投合することができ、たくさんの話をしました。

何よりも印象的だったのは、ドクター・チャウの「ベトナムのオリジナルの療法によって、ベトナム国民を病から救いたい」という情熱でした。千年も中国の支配を受け、その後もフランス、アメリカに侵略され、ずっと海外勢力に抵抗し続けてきた歴史のあるベトナム。そのような背景の中で、ベトナムのオリジナルの療法によって、ベトナム国民に貢献しようと奔走しているドクター・チャウは、まさにベトナム国民の救世主のように思え、その愛国心に感激しました。そして、日本とベトナムを往復しながらディエンチャンを学ぶ日々が始まりました。

 

ロネも魅了されたベトナムの反射療法・ディエンチャンとは?

200種類もの反射区チャート

ディエンチャンの理論で大切なことは、「一元論(Monizm)」の考え方、つまり「A=B=C=D」という考え方です。例えば、顔の眉頭の辺りは肩の反射区ですが、肩は足指の反射区であり、足指は手指の反射区であり、手指は頭部の反射区であり、頭部は握りこぶしの反射区であり・・・という風に、反射区の連鎖が永遠に(?)続いていくのです。

まるで、一つの人体が、多面鏡に写っているかのように、様々な角度に反射していきます。反射区チャートの数は、なんと200枚にものぼります。どのクライアントに、どのチャートを適用するのか。それは、施術者の経験と直感、そしてクライアントとの相性にも寄るのだそうです。「この症状にはこの反射区」とは決めつけずに、クライアントと波長の合う方法を、注意深く探っていくことが重要です。
そのため、セラピストには、クライアントとのコミュニケーション能力、洞察力、手の感覚を研ぎ澄ませることも必要なのだとドクター・チャウは言います。いくつかの反射区を組み合わせれば、同じ症状に対しても、施術のアプローチ方法は何万通りにもなります。セラピストとして、これほど好奇心をそそられ、やりがいを感じることのできるセラピーはありません!

90種類もある不思議な道具たち

ディエンチャンの二つ目の特徴は、道具を使うということです。ドクター・チャウが開発した道具は90種類にものぼり、その多くに「陰」と「陽」の両面性を持っています。例えば、叩いて筋肉を刺激するハンマーは面が平らな側が「陰」、ゴムの突起が付いている側が「陽」になります。皮膚上で転がすローラーは、金属で出来ている側が「陰」で、水牛の角で出来ている側が「陽」です。ベトナム民間療法では、身体の陰陽のバランスを取ることを重要視していますが、ディエンチャンでは、このような道具を使うことにより、簡単で確実に陰陽の刺激を与えることができるのです。小児や病弱な方で、早急に「陽」を増強したい場合は、身体を直接温めていきます。お灸と「サロンパス」は必須アイテム。「え!?サロンパス・・・??」と、最初は私も不思議に思いましたが、5mm角にカットしたサロンパスを反射区やポイントに貼り付けるこ続させることができるのだとか。世界屈指の美女と言われるベトナム人女性が、顔中にサロンパスを貼り付けた姿は、微笑ましいものがありますネ!

 

効果抜群!即効性のある驚愕のセラピー!

近年経済発展が目覚ましいと言われているベトナムでも、平均月収は一万円程度。健康保険制度はありますが、国民の多くは未加入という状態。経済的理由で医療が受けられない人が多く、重症化してやっと病院に運ばれた時には手遅れということも多いのです。そのような厳しい現状の中で、民間療法は、代替補完療法として必要不可欠なものと位置付けられています。

数々ある民間療法の中でも、ディエンチャンは、即効性があり効果が高い療法として、ベトナムで高い評価を受けています。ベトナムの全ての省にディエンチャンのクリニックがあり、医療の受けられない人々への支援活動なども行っています。ベトナム滞在中、毎日クリニックを見学させていただきましたが、肝炎、ガン、感覚の異常、麻痺、筋骨格系のトラブルなど、様々な疾患をお持ちのクライアントが常に行列をつくっている状態でした。

ミルクを全然飲まないでぐったりとしている乳児がディエンチャンを受けることで、みるみる元気になった姿も目の当たりにしました。「自然療法とは、即効性がない代わりに、時間をかけて自然治癒力を回復させていくもの」とよく言われていますが、反射区、神経ポイント、経絡など自然療法の叡智を総動員させたディエンチャンには、驚くほどの即効性があるのです。

ディエンチャンを学ぶのは、難しそう・・・」と思われた読者の方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、儒教、道教、仏教の思想を取り入れたドクター・チャウの壮大な世界観を完全に理解することは容易ではなく、その勉強には、永遠に終わりはありません。でも、ディエンチャンの最大の特長は、「難しい理論は分らなくても、セラピストにポイントを教えてもらえば、誰もが簡単に施術が可能」ということだと私は思っています。家庭でのセルフケアは、ものの3分!!5人家族全員やっても15分!!という短さです。これなら毎日でも楽しく続けられるのではと思います。

私自身、長年セラピストとして活動していますが、「家庭におけるケアは、どんなプロの手にも敵わない」と思っています。「短い時間で良いから、毎日家庭でケアしてくれたらもっと良くなるのに・・・」と思えるクライアントも多くいらっしゃいます。 ディエンチャンは、私たち日本人にとっても、ファミリーケア、セルフケアとして、大いに活用できるのではないかと思っています。

 

おわりに

日本では、10数年ぶりにベトナム語辞書を広げ机にかじりつく毎日。ベトナム滞在中は、朝から晩までドクター・チャウに密着してディエンチャン漬けの毎日。そんな努力の甲斐あって、2009年8月に晴れてディエンチャンのディプロマコースを修了することができました。

2009年9月には、代々木公園で行われた「シンチャオ!ベトナムフェスティバル」に日本初のベトナムスパを出店させていただきました。青空の下、ほかのIMSIスタッフたちとベトナムの民族衣装・アオザイ姿で、たくさんのお客様にベトナム民間療法の施術をさせていただきました。同時に、IMSI講師サロンThe Instituteでもベトナム民間療法の施術をスタートし、既に多くのお客様にご利用いただいています。また、新しく立ち上げた「ベトナム民間療法入門」講座の中では、ディエンチャンのほかにもカオヨー(ヘラで皮膚を擦る療法)、ヤッホイ(吸い玉)などの民間療法を、実技も含めて盛り沢山で紹介させていただいています。そして、IMSIに直接足を運ぶことが出来ない方のために、ベトナム民間療法の専門サイトhttp://www.vietnam-daisuki.com/をオープンさせました。

私自身、思えば、学生時代にベトナム留学し、現地で民間療法を受けたことがセラピストを目指すきっかけにつながりました。ですから、このようにベトナム民間療法を皆様にご紹介できる形になったことを、大変感慨深く思っています。IMSIでは、プロを目指す方にも、ファミリーケアを学ばれる方にも、素朴で温かみのある民間療法、実用的で効果抜群の民間療法をタップリとお伝えできたらと思っています。

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